詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

2016-08-28から1日間の記事一覧

坂の上の黒

黒い物体が言った 「おれは物凄く硬くなれるし 物凄く柔らかくもなれる」 私は言った 「じゃあ、見せてみろ」 すると黒い物体は、丸くなり ボーリングの球のようになった 指で触ると、確かに硬かった 「じゃあ、今度は柔らかくなるぞ」 黒い物体は、そう言っ…

ボールは友達ではない

サッカーをしたいのに ボールがない時 子供たちは、野山へ向かい みんなで協力して ボール豚を捕まえて来る ボール豚は ただの豚の頭である 長めの耳や、大きめの鼻を使って 前回りをしながら 移動するだけの、下等動物である 大きさがちょうど サッカーボー…

使用上の注意

海から上がって シャワーを浴びて ドライヤーはあるけど 電源がない時 私は、発電クラゲを使って 髪を乾かします まず、発電クラゲを捕獲します 次に、どこでもいいから 発電クラゲの身体の一部に ドライヤーのプラグを しっかりと、挿し込みます 発電クラゲ…

神の悪戯で生まれたような魚

骨魚は、生まれた時から 身も内臓もついていない 大きな頭と、尻尾があるだけ 外見は、魚の食べ残しのよう まな板の上に乗せられた 骨魚は、「なぜ、私を?」 という、不思議そうな目で 料理人を見つめる しかし、不幸なことに この骨魚の目玉こそが 食通た…

定説がひっくり返るかも知れない話

背面蛙は、背泳ぎしかしない 地面にいる時も、ブリッジしながら歩く だから、蛙の癖に 思いっ切り、ジャンプしても たかが知れている 人間がイタズラ心で ひっくり返すと 慌てて、すぐに体勢を戻し 真っ白い腹部を これでもか、と突き出してくる 実は背中に…

もうすぐ、不眠姫が眠り姫になる

不眠姫は眠らない 眠れば、誰かが 自分の悪口を言うに違いない そう思い込んでいるから 絶対に眠らない 不眠姫ときたら とにかく、眠らないものだから いつも、イライラしている ちょっとしたことで 家臣を解雇したり 使用人を檻に閉じ込めたり 時には、処刑…

閉ざされた王様の記憶

王国から追放されて 狂ってしまった王様は 今じゃ、自分の頭の中すら 支配出来なくなった 王様は、いつも 隣国の貧民街の路地裏で 威風堂々、何をするでもなく 捨てられた、ぼろソファーに座っている 何故か、王冠だけは まだ、頭の上に載っている 憐れと思…

三種類の虫の話

情けない虫は 生まれながらに、動けない だから、情けある虫に 餌を運んで来てもらう 容赦ない虫は そんな二匹の姿を発見すると 情けない虫も、情けある虫も 力の限り、ぶん殴り、蹴り飛ばし 気絶させてから、まとめて喰う 食後、容赦ない虫は 「情けない虫…

ある資産家の生活

黄金人間は 溶かして金にしたら 大変な価値がある だから、いつも 闇の組織に追われている その闇の組織に、捕まらないように 黄金人間は、いつも変装している 帽子、サングラス、マスク マフラー、コート、手袋 季節が、春でも、夏でも この怪しい格好をや…

神様にも、わからないことはある

ある時、天国で 天使が、神様に 「鶏が先か?卵が先か?」 という、質問をしました 神様は、ちょっと考え込んでから 「忘れてしまった」と答えました 天使がしつこく 「思い出してください」 と、迫りました 「うるさい、私は今 それどころじゃないんだ!」 と、神様…

インテリ王子の明るくない未来

インテリ王子は 頭に、王冠ではなく 電球を載せている いつ何時でも 名案が浮かんでいるように 思われたいかららしいが 国王も女王も インテリ王子が 本当にインテリだとは 思っていない 実際、インテリ王子の 頭上の電球が光った時 「何か名案でも?」と訊い…

私の辞書

私には 行く場所も 帰る場所も、ない だから、私の辞書には いってきますも ただいまも、ない そして、私には さよならを言う 相手もいない だけど、私の辞書には さよならだけは きちんと、記されている それは、たぶん 自分に、さよならする時に 使用する…

汚れきってはない男

汚れちまった とにかく、汚れちまった どんなに洗っても、落ちないくらい 汚れちまった 汚れちまった ああ、恥ずかしい こんなに汚れちまって うしろめたい話だよ こんなに汚れちまって もう、どうしようもないから 汚れちまって、汚れちまって 頭が変になり…

王位継承したものの

居眠り王子は 父の死にともなって 居眠り大王となったが とにかく毎日 二十時間以上、眠るので 内政、外交、ともに 大した仕事は出来ず まさに政治が、眠りこけた状態となり この機に乗じて 隣国が攻めて来て 領土の半分を失い 求心力を落としたところで 軍…

今は亡き、アイツへの弔辞

着飾らしてやりたかった 毎日、いつ何時でも 裸でいるしかなかった アイツを 着飾らしてやりたかった 自分のプライドを守るために 服を着る者、着る者に 暴言を吐く、時には殴る アイツを 着飾らしてやりたかった 人に隠れて ファッション雑誌を眺めつつ 思…