誰も救われない病院
夜しか開業していない
暗い街の、暗い病院の、暗い診察室で
暗い医師と、暗い看護師と、暗い患者Aが
「いっそ、三人で死にましょうか?」
と、暗い相談をしている
その頃、暗い待合室の
黒い長椅子に座っている
暗い患者Bに、暗い受付の女が
「私、この仕事辞めたいし、人間も辞めたい」
と、暗い告白をしている
その頃、暗い薬局の男も
「薬なんかあるから
人は無駄に長生きし
地球環境は悪化する
私は罪深い、死んで詫びる」
と、暗い思想にかぶれ、自殺してしまった
そんな暗い病院の中で
駐車場の外灯だけが、やたら明るかった
そんな暗い病院の中で
死体安置室の数人だけが
微笑したまま、硬直していた
当然、その中には、例の
暗い薬局の男も入っている