詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

アリとキリギリスと、アリの子供たち

 

アリは、春夏秋と働き通しで

冬が来るのに備えました

 

一方、キリギリスは

冬になれば、食べ物が無くなる事実を

忘れてしまうほど

春は、花見に遠足

夏は、キャンプにプール

秋は、月見に趣味のバイオリン

日々、暇があれば、読書

と、人生を楽しんでいました

 

やがて、問題の冬がやって来ました

アリは自宅に籠って

子供たちに、労働の大切さを説いていました

そこへ、キリギリスが現れて

「何でもいいから、食べ物を」

と、玄関先で物乞いをしました

その姿を見たアリは

軽蔑の眼差しで、こう答えます

「君は、冬になる前は何をしていたんだね?

 一年中、遊んで暮らしていたんだろう?

 僕は、一生忘れないよ

 君が自慢気に語った、モナコ旅行の話」

そして、アリは子供たちを呼んで

「こんな大人には絶対なるなよ」

と、キリギリスを笑いました

「何かくれだなんて、ムシがいいぞ!」

「お前なんか、あっち行け!」

「モナコでもどこでも、行っちまえ!」

と、アリの子供たちに

さんざん、罵倒されたキリギリスは

涙しながら、街をさ迷い歩きました

 

そして、そのまま、凍死してしまいました

 

翌年の夏、あの働き者のアリは

病気にかかり、寝込んでしまいました

例のキリギリスの幽霊に

とり憑かれてしまったのです

 

「ああ、どこかで聴いたことのある

 バイオリンの音がする」

アリは、日々、衰弱していきましたが

子供たちは、誰も面倒をみてくれません

 

「働かざる者、食うべからず」

かつての父の言葉を

子供たちは忠実に、守っていたのでした