警察曰く、この女、妄想が酷い
手錠を掛けられたまま
ある一室に監禁されていた男は
もう、完全に狂っていた
この男を監禁し、手錠を掛けた女も
負けず劣らず、狂っていた
「手錠を外して欲しい」
と、男は涙ながらに訴えた
「手首ごと、切り落としてもいい?」
と、女は微笑しつつ、聞き返した
男が「それでもいい」と、了承したので
女は斧を使って、躊躇せず
男の手首を切断した
男は間もなく、出血多量で死んでしまったが
手首は左右ともに、「これで自由の身だ!」
と、室内をはしゃぎ回っている
女は、両手首を捕まえて
「気持ち悪いから、あっちへ行け!」
と、窓から放り投げた
両手首は「更なる自由を、ありがとう!」
と、大騒ぎしながら、地面を駆けて行った
女は、警察に逮捕された
事情聴取で、刑事に
「男の手首は、どこに隠した?」
と、何度同じことを訊かれても
女の答えは、いつもこれだけ
「知りません、知っていたところで
彼らは自由に動き回りますから」