埋もれてゆく女画家の話
不幸な女です
他人は誰も、気付いていませんが
間違いなく、不幸な女です
「アナタって幸せね」
そんなこと言われことのない
友人などいない
恋人はいたが
そのせいで、人間不信になった
不幸な女です
菜食主義者には珍しい
野良犬や野良猫の
虐待が趣味の
子供の頃から、自画像と
実家の小さい家を描くのが好きな
不幸な女です
彼女は、いつも微笑しています
誰かと会う時も
犬や猫を踏みつける時も
自分の顔を描くため
鑑に映る自分を、見つめる時も
実は、彼女は、自分が
不幸である自覚など、ないのです
彼女の絵は
彼女の狭いアパートの押入れに
数え切れないくらい存在していますが
おそらく、彼女が死んでも
引き取る人はいないでしょう
彼女の、預金や保険金に関しては
誰かが受け取るに違いないのに