詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

どぶ男ドブオの話、前編と後編

 

どぶ男ドブオ?

 

どぶ男ドブオ、どぶ川に定住

いつも、顔だけ出して、泳いでいる

 

彼が愛する、どぶ川の中には

捨てられた傘、捨てられた自転車

捨てられたマネキン、捨てられた拳銃

捨てられた猫の死骸、など

捨てられたものが、いっぱい

 

「ドブオ、お前も捨てられたのか?」

と、誰かが橋の上から訊く

 

「そんなことあるか!

 こっちが世間を捨ててやったのさ!」

と、ドブオは、前歯もないのに

とびっきりの笑顔で答える

 

どぶ男ドブオ、あくまで仮名

本名も過去も、誰も知らない

 

 

どぶ男ドブオ、死す

 

どぶ男ドブオが、猫の死骸と一緒に

どぶ川で、プカプカ浮きながら、死んでいた

 

自殺か?事故死か?

それは、よく分からない

 ただ、ついさっき、こんなことがあった

 

偶然、通りかかった、小学生の男の子が

橋の上から、大きな声で

「お父さん、ねえ、お父さんでしょ?」

と、ドブオを呼び止めた

 

彼は、その声にギクリとして

恐る恐る振り返り

その小学生の顔を、ジッと見つめて

「違う、違う、人違い!

 人違いに決まってるだろ!

 あっちへ行け!」

と、凄い勢いで否定してから

どぶ川の底へと沈んでゆき・・・・・

 

浮かんで来た時には

もう、息をしていなかった

 

自ら世間を捨てたはずの

どぶ男ドブオが、たったひとつ、捨て切れず

忘れていったものが、あの子供だった?

 

真相は、どぶ川の中

もう、分からずじまい