詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

彫り師、その名人芸

 

男は自分の右肩に

全長五センチほどの

鼠の刺青を彫った

 

余程、職人の腕が良かったのか?

 

刺青の鼠は、魂を宿し

チュウチュウ、鳴きながら

男の背中を、胸を、腹を

 

慌ただしく、走り始めた

 

数日後、男は

刺青鼠の鬱陶しさに、耐え切れず

この刺青を彫った、職人の店へと向かった

 

「刺青猫シールを貼りましょう」

話を聞いた職人は、そう提言し

男の上着を脱がせ

背中に、刺青猫シールを貼った

 

あっ、と言う間に

刺青鼠は、刺青猫シールに

捕らえられ、くわえられ

噛み砕かれ、飲み込まれた

 

そして、職人は

刺青猫シールの首根っこを掴み

丁寧に、剥がしていった

 

男の身体は、元通り、きれいになった

 

ひと仕事終えて、職人は言った

「刺青なんて、傷痕と変わらないんだ

 もう、軽い気持ちで彫りに来るなよ」