ほぼ認知症の祖母、フランツ・カフカ的不条理世界に、迷い込む
今回の記事も「詩と寓話と・・・」ではなく、「看護と介護と・・・」の方の話です。
いつも、このブログに登場する九十六歳の祖母は、最近、一気に足腰が弱りだして、杖があっても、足下がフラフラだし、立とうと思えば立てるのに、「楽だから」と、室内を四つん這いで、移動するようになってしまいました。
それなのに、一日のうち、二時間や三時間は、自ら、庭に出たがります。大昔の泥棒みたいな手拭いを、しっかり、頭にかぶせて・・・。
もちろん、ずっと家の中にいるより、精神衛生上良いのでしょうが、わざわざ、震える足で外に出て、一体、何をしているのかというと・・・落ち葉拾いです。
片手に、コンビニの小さい袋を持ち、コツコツ、杖を突きながら、時には、地面に膝を付け、四つん這いになりながら、ただ、ひたすら、落ち葉を拾います。袋に溜まってきたら、庭にある地面のくぼみに、捨てに行きます。二袋分、三袋分と増えていきます。
しかし、残念なことに、十分置きくらいに、強い風が吹き、集められた落ち葉は、あちこちに飛び散ります。祖母は、それを慌てて、拾いに行きます。杖を突きながら、時には、四つん這いになりながら。長い時は、こんなことを二時間以上繰り返します。まず、ゴールに、辿り着くことはないのに・・・。
まるで、日本でいう「賽の河原」の石積み、ギリシャ神話でいう「シーシュポスの岩」のようです。
祖母のやっていることは、全くの徒労であり、三十分くらいなら、本人の運動になって良いかと、私は放置しますが、一時間過ぎると、「そろそろ、家に上がるように」と、警告をします。
しかし、祖母は、落ち葉拾いに夢中で、私の警告など、三度聞いても、無視したうえ、更に、「お前の世話になんかならない。放って置け!」と、悪態までつきます。
二時間くらい経つと、疲れてきたのか、体が冷えてきたのか、「よっこらしょ」と縁側に上がり、行儀悪く脚を伸ばして、「お茶!」と、私に命令します。
さっき、私の世話にはならないと、大声で宣言したばかりなのですが・・・。
ちなみに、三年前の春、祖母は、このフランツ・カフカ級の不条理世界を体験中、冬眠から覚めたばかりの蛇に、手の指を噛まれて、救急車で運ばれて行きました。
去年は運良く、そのような事件は起きませんでしたが、今年は何だか、嫌な予感がします・・・。