詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

認知症が進行する祖母の幻覚(まぼろしの城)

 

 早朝、今年で九十六歳になる祖母が、自分のベッドの上で食事をしながら、唐突に、こんなことを言い出しました。

 

「ウチの目の前にある畑は、誰かに売ってしまったのか?」

「売ってなんかないよ。ただ、ウチで使う人がいないから、貸してはいるけど」

「昨夜、みんなで売る相談をしていたから、てっきり、売ってしまうのかと思った」

「そんな相談、誰もしてないと思うけど」

「そんなことはない。昨夜、二階で、畑を売る話をしていた。反対する人もいて、怒鳴り合う声も聞こえた」

「まさか。私は昨夜、二階の自分の部屋に居たけど、ずっと静かだったよ」

「あんなに、うるさかったのに、何も聞こえないんじゃ、病院行った方がいいね」

「・・・・・・」

「売れば二千万円になるらしい」

「なるわけない。なるんだったら、私も売る方に賛成するよ」

「お前なんか、賛成したって仕方ない。○○(私の父)が決めることだよ」

「・・・・・・」

「もう、工事も始まっているから、今更、売れませんとはいかないよ」

「工事?家の前の畑で?」

「そうだよ、が建つんだよ」

「シロって、あの名古屋城とか、大阪城とか、熊本城とか・・・」

「そうだよ、お城だよ。もう、半分以上、出来ている。窓サッシ開けて、見てみろ。立派な城だから」

 

 当然、私の家の前(畑)に、祖母の言う、立派な城なんて、建っていません。

 

 私は、祖母が朝食を食べ終えてから、やや強引に、縁側まで連れて行き、窓サッシを開けて、「どう?城は見える?」と聞いてみました。

 

 もちろん、私が期待していた言葉は、「見えない」だったのですが、それに反して、祖母の答えは、「見えるよ。昨日までは分からなかったが、これは、日本の城ではなく、西洋の城だ」でした。


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 見えないもの(存在しないもの)が、見えるって、何だか、とても怖い話ですけど、自宅の前の畑に、突然、西洋風の立派な城が建つという、祖母の隠れた(無意識の)発想力に関して、私は素直に感心してしまうのでした。

 

 

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