詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

ひよっこの第80話、宗男の戦争体験とビートルズ、脚本家の頭の中でしか、繋がらなかったと思います

 

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 NHK・朝の連続テレビ小説「ひよっこ」の第80話は、奥茨城編から、長い間、引っ張ってきた、「宗男の性格まで変えてしまった、戦争体験とは何か、それは、後に彼が、ビートルズの大ファンになることと、どう繋がっているのか?」を描いている(というより、語っている)のですが・・・残念ながら、そして、期待通りと言っては申し訳ないですけど、イマイチ、説得力に欠けるものでしかありませんでした。

 

 ひよっこにおける、鈴子や省吾の戦争体験の話も含めて、私が感じた印象を、率直に言わせてもらえば、「中高生が、先生(大人)に誉められることを意識して書く、戦争をテーマにした作文、その延長線上にある、ゴール」、それが脚本家の岡田恵和氏の戦争観であり、描いているものなのだと・・・良い風に解釈すれば、岡田氏は、きっと、感性が若いのでしょう・・・今回の宗男の戦争体験談も、例えば、宮藤官九郎あたりが書いていれば、「いかにも、40過ぎくらいの脚本家が書きそうな話だな、世代なんだろう、悪くはない」で、済んだような気がします。

 

 しかし、還暦手前の岡田氏がやれば、「あの人、年いくつでしたっけ?」と、皮肉られてしまう訳ですが・・・。

 

 

 宗男の戦争体験談を、ざっとまとめると、「旧日本軍の、非合理性を象徴する戦いのひとつとも云われる、故に、多くの死傷者を出した、あのインパール作戦に、宗男は、いち兵士として従軍していた。ある時、自分の部隊の周辺を偵察中、一人の英国兵士と遭遇、そのまま、撃ち合い、殺し合いになってもおかしくはない状況下、二人は顔を見合わせるだけで・・・英国兵士は、笑顔になる余裕を見せつつ、去って行き、そんな余裕はなかった宗男も、事なきを得た・・・そして、時を経て、宗男は、ビートルズを好きになった、かつての敵国の音楽じゃないか、と不思議に思う人もいるかも知れないが、むしろ、彼は、また、英国にやられたという、英国人を称えたい気分の中、今に至っている」というものなんですが、ハッキリ言って、宗男の戦争体験とビートルズ、大した繋がり、ありません。

 

 あくまで、私の個人的意見に過ぎませんが、宗男が、戦後、20年以上経っても、夢でうなされるほどのトラウマを抱えているのなら、「敵兵を殺さないで済んだ思い出」より、「戦場で、正々堂々と、一人や二人ではない数の敵兵を、殺した記憶」の方を描いて欲しかった気がします。

 

 それは、NHKの朝ドラには、相応しくない?それを言い出すのなら、戦後の高度成長期の若者を主人公にした話をしているのに、ちょくちょく、戦争の話を挟むこと自体、NHKの朝ドラに、相応しいものではないと思うのですが・・・。

 

 中高生が、いかにもな「戦争反対・ラブ&ピース」な作文を書いて、先生に誉められたい、学校の成績を良くしたいと思うように、脚本家の岡田氏も、そういった内容のエピソードを挟むことで、批評家先生から誉められたい、出来れば、視聴率の方も良くしたい、とでも思ったのでしょうか?

 

 もし、岡田氏が、そう考えていたのだとしたら、宗男の戦争体験の話と、ビートルズ来日の話を、強引に繋ごうとするよりも、別々にやった方が良かったと思います。

 

 例えば、八月十五日の終戦記念日の前週あたりを、「ひよっこ・戦争ウィーク」にして、「月曜日・愛子の場合(恋人が出征する話)」、「火曜日・省吾の場合(軍隊生活の不条理の話)」、「水曜日・宗男の場合(戦場での奇妙なハプニングの話)」、「木曜日・鈴子の場合(空襲の話)」、「金曜日・元治の場合(占領と戦災孤児の話)」、「土曜日・実の場合(捕虜生活と故郷への帰還の話)」とやり、この一週だけ、視聴者に対し、戦争に関するメッセージを送ることにして、後は、一切、戦争には触れない、「ホノボノとした、本来の、ひよっこ劇場」を最終回まで続ける、そんなメリハリの利いた構成にして欲しかったです・・・。

 

 岡田氏の、ひよっこにおける、戦争エピソードの挟み方は、正直、言い方は悪いですけど、腹八分目でいいのに(日常的な話だけでいいのに)、いつの間にか、欲張りになってしまった岡田氏が、満腹になりたくて(もっと、色々な人から、誉められたくて)、「戦争ネタのつまみ食い」をしているようにしか、私には見えません。

 

 もちろん、私自身の性格の悪さが反映されて、そう見えているだけなのかも知れませんが・・・。

 

 実際、決して少なくない数の、視聴者や批評家から、好意的な評価を受けているようですし・・・。

 

 でも・・・いや、続きは、岡田氏が、また、戦争ネタのつまみ食いをした時のために、取って置くことにします。

 

 

 それでは、最後になりますが、読者の皆さん、別に面白い訳でもない、結構な長文、お付き合い頂き、本当に、有り難うございました。