閉ざされた王様の記憶
王国から追放されて
狂ってしまった王様は
今じゃ、自分の頭の中すら
支配出来なくなった
王様は、いつも
隣国の貧民街の路地裏で
威風堂々、何をするでもなく
捨てられた、ぼろソファーに座っている
何故か、王冠だけは
まだ、頭の上に載っている
憐れと思った人々が
朝昼晩と、パンや飲み物を恵んでくれる
すると、王様は、こう礼を言う
「家来にしてやろう」
もちろん、誰もが思わず、噴き出してしまう
いつだったか、王様は
何かの拍子に、正気に戻った時もあった
が、三日で元通り、狂ってしまったという
王様が何故、王国を追放されたのか?
その真相を尋ねてはいけない
訊くと号泣し、暴れ出し
手がつけられなくなるから
王様は、ただ
ひと切れのパンを所望している
もう、それ以外、何も求めていない