詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

壁画女の恋愛遍歴

 

壁がある

そこには、女が描かれている

女には、魂が宿っている

比喩ではなく、生きている

しかし、所詮は絵であり

壁からは出られない

 

つまり、恋も出来ない

 

通行人を呼び止めて、話し掛けるだけ

天気の話だとか、景気の話だとか

大体、相手の話を聞くばかり

 

本当は、恋がしたかった

愛していると、言われたかったし

キスして欲しいと、願っていた

 

しかし、好きな男が出来ても

「アナタ壁でしょ?」

と、指摘されるのが怖くて

告白など出来なかった

 

月日は流れて

壁にヒビが入り、絵は消えかけ

通行人も、近寄らなくなった

 

更に月日は流れて

壁は完全に、崩壊してしまった

 

女は、唇の描かれた、ただの石となり

ある若い男に拾われた

 

よく会話をし、仲良くなった

 

それでも女は

「キスして欲しい」

とは言えなかった

 

ただ、この若い男の恋の相談に乗るばかり

一度も恋なんて、したことがないのに