自殺男と発狂女
自殺男は、その名の通り
すでに死んでいる
もう、白骨化してから
かなりの時間が経過している
遺書はあったが
まだ、誰も読んでいない
発狂女は、自殺男の恋人である
彼の自殺の第一発見者であり
そのままショックで
頭がおかしくなってしまった
発狂女は、毎日
自殺男を抱きかかえながら
全身に接吻する、耳元で何か囁く
突然、怒りだし、彼を突き飛ばす
しばらくして、気持ちが落ち着くと
発狂女は、彼と一緒に入浴する
食事も向かい合ってする
トイレにまで連れて行く
当然、寝る時も二人一緒で
自殺男を抱き枕にし
疲れはて、眠るまで、何か喋っている
実は、自殺男の遺書には
発狂女への不満が、延々と記されている
彼女こそ、彼の自殺の元凶といえた
発狂女は、それに薄々気付いている
だから、決して
遺書なんて読もうとは思わない
二人の思い出を美化するのに
毎日が、忙がしい