ある動物園一の哲学者、厭世猿
ある動物園の猿山にいる、厭世猿は
つい、この前まで、人間だった
しかし、自分が人間であることが
嫌で嫌で仕方ない
そう苦悩し続けた結果
猿へと退化した
本人は、進化だと思っている
他の猿たちが
厭世猿の周囲で
キーキー、キーキー
楽しそうに、はしゃいでいるのに
彼ときたら、徹底的に
見ざる、言わざる、聞かざる
更に独自の哲学を加え
他の猿たちに
どれだけ、無礼なことをされても
憎まざる、をモットーにしている
動物園の飼育係の大半は
厭世猿なんて、ただの痴呆猿だと思っている
しかし、厭世猿は
それに気付いても、苦笑すらしない
大変、立派な猿であり、元人間である