アイデンティティクライシス、油断も隙もない世界
夏の暑さに弱い、飴猫は
太陽の熱にやられ、身体が溶けだしていた
それを修繕するため
知り合いの、飴職人の店を訪ねた
「もう、こんなに溶けちゃった
形を整えてくださいな」
十分後、飴職人のイタズラで
飴猫は、鼠の形に変えられていた
その姿を、店にあった鏡で見た
飴猫は、「酷い」と呟いたあと
余りのショックで、倒れてしまった
そして、飴猫は
そのまま、死んでしまった
「・・・アイデンティティクライシス」
という言葉を、最期に残して
余談だが
ただの大きめの鼠となった
飴猫の遺体は
結果として、彼を殺してしまった
飴職人の店に、今も商品として並んでいる
このタチの悪い、飴職人には
自分の悪趣味なイタズラで
飴猫をショック死させてしまった
反省やうしろめたさなど
砂糖一粒ほども、ないようである