九十六歳の祖母、「罰金が来た!」と、孫に報告をする
今回も、軽い認知症の祖母との留守番生活の話です。
今朝、私が祖母のために、台所でお茶の準備をしていると、ピンポン、とチャイムが鳴り、来客があったようなので、玄関の方へ向かいました。
たまたま、廊下を歩いていた祖母が、既に来客に対応していました。
祖母は私の顔を見つけると、結構、早足で、こっちにやって来て、「罰金が来た。いくらかは、まだ訊いてない」と、私に小声で報告してくれました。
「罰金?何で?誰が?」と、私が首を傾げた、その直後、玄関先で、寒そうに立っていた女の人が、大きな声で言いました。
「おはようございます、ダスキンです!」
祖母は、「何だ、ダスキンか・・・」と、何故か、つまらなそうに、自分の六畳間へ、ゆっくり、帰って行きました。
ちなみに、ダスキン代は、珍しく、祖母が払ってくれました。
ダスキンの集金の女の人が帰ってから、祖母は、私が買って来たコンビニのドーナツを、一気に平らげ、お茶を飲みながら、「食べ過ぎた。昼食はいらない」と、私に言いました。
そうは言っても、祖母は食欲旺盛なので、一食抜くとは考えられず、「じゃあ、昼食の時間を三十分遅らせよう」と、私が提案すると、「そうしてほしい。もっと遅くても構わない」と、苦しそうに答えました。
そして、いつもなら昼食になる十二時を、十分ほど過ぎた時、祖母は、階段の下から、二階にいた私を呼びつけて、こう言ったのでした。
「ご飯は?もう、十二時過ぎてるのに!」
「三十分、遅めにするんじゃなかったの?」と、私が階段の踊り場で、いかにも不満げに言うと、祖母は、「ゴチャゴチャ言ってないで、何でもいいから、早く持って来てよ!」と、理不尽に、怒鳴り散らすのでした。
俗に言う、逆ギレというやつです。
私は、五分で祖母の昼食を用意しました。ご飯をよそって、味噌汁はインスタントで、既に出来ているおかずを、小さい皿に並べるだけですから、男の私でも、簡単なことです。
食事中、機嫌が直った祖母は言いました。
「お前の作る味噌汁は、他の人が作るものより美味い!」
これまで、インスタントではない味噌汁を、ずっと、祖母に出してきた、母親や妹の立場は?
そう思った私は、美味そうに、インスタントの味噌汁を啜る祖母を見つめながら、苦笑せずには、いられないのでした。