詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

九十六歳の祖母、「財布が入った鞄がない!」と、孫に探させる

 

 最近、このブログの記事は、「詩と寓話とシュールレアリスム」というより、「看護と介護と、そのリアリズム」といった内容ばかりで、「つまらない」と思われている読者の方も、少なくないかも知れませんが、今回も、「看護と介護・・・」の方です。

 

 毎日毎日、初老の病人と、痴呆の老人の話ばかりで、興味のない読者の方、本当に申し訳ありません。「どうせ、詩の方もつまらないんだから、一緒だよ」と思われている方、有り難うございます。いっそ、そう言われた方が、書き手も楽です。

 

 

 今朝、いつものように、一階にいる祖母が、二階にいる私を呼んで、こう言いました。

 

「私の鞄がない。いつも財布を入れているやつ。お前は知らないか?」、「知らない。でも、ベットの下か、机の下だと思うけど」、「そんなところは探した。でも、ない」、「タンスの中にしまったとか?」、「そんなところにしまわない」、「とにかく、一緒に探すよ」、「誰かに盗られたのかも」、「そんなことはないから、探そう」

 

 で、祖母が無くなったと主張した鞄は、私が言った通り、ベットの下にありました。それなのに、祖母は何故、見つけることが出来なかったのかというと、自分で鞄に、布のようなものをかぶせていたからです。

 

 布は、認知症のせいで、被害妄想が強くなっていて、誰かに盗まれないようにと、祖母なりに、カムフラージュしたつもりなのでしょうが、それで自分自身が、鞄のある場所を忘れてしまうようでは、本末転倒です。そして、こっちは、いい迷惑です。

 

 鞄を受け取った祖母は、無表情に財布を取り出して、減っているはずも、増えているはずもない、お金を勘定し出します。そして決まって、「・・・おかしい。もっと、あったはずなのに!」と、大声で言います。

 

 半年くらい前は、きちんと家族の誰かが、年金を貰った直後の所持金が、いくらくらいあって、あんなことに使って、こんなことに使って・・・と説明したうえで、「だから、今の額でいいんだよ。誰にも盗られてなんかないんだよ」と、祖母を納得させる努力をしていましたが、そんなことをしても、「おかしい。無くなった!」と興奮した祖母は、誰の話も聞く耳を持たないので、最近は、何も言わずに、放置します。

 

 

 どうせ、しばらくすれば、祖母は「金が無くなった!」と、自分が騒いでいたことすら、忘れてしまうのですから。