詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

認知症の祖母、なぜか自分が、老人ホームにいると思い込む

 

 午前十時、私がお茶とカリントウを持って、祖母の部屋に入ると、祖母が私に「早く、家に帰りたい」と、おかしなことを言ってきました。

 

「帰りたいも何も、ここが家だよ」、「こんな家知らない」、「もう、十何年住んでるのに?」、「まだ、来たばかりだよ」、「どこに来たと思ってる?」、「施設だよ。ジイサンとバアサンばかりの」、「老人ホームってこと?」、「それは知らない。みんな私と一緒にいるのが、嫌なのだろう」、「何の話?」、「九十過ぎて、こんなところに放り込まれて」、「自分の家にいるだけだよ。そもそもウチに、婆さんを施設に入れる金なんてない」、「私の年金を勝手に使ってるのだろう」、「あんな少額の年金では、どこも入れてくれない」、「じゃあ、何で私はここにいるのか?」、「自分の家だからだよ!」、「そんな訳ない!」、「じゃあ、逆に、私はどうして、ここにいるの?ここが本当に老人ホームだったら、私はいないはずでしょ?」、「何で、ここにいるって・・・どうせ、暇だからいるんだろう」、「じゃあ、案外、暇じゃないから帰る!」、「私も連れて行け!」、「・・・頼むから、その部屋で寝ていてくれる?」

 

 こんなやり取りがあった今日の正午、私が昼食を持って、祖母の部屋に入ると、祖母は、今日の新聞のお悔やみ欄を見ながら、「みんな年下ばかり死んでいる」と呟いて、私を笑わしてくれました。

 

 私がテーブルにお膳を置きながら、「ここがどこか分かる?」と、祖母に訊ねると、「○○県○○市・・・」とウチの住所を答えてから、訊いてもないのに、「電話番号は・・・」と、まるで迷子の優等生のごとく、正確な情報を喋り出しました。

 

 そして、私の去り際、祖母は怒った口調で「ったく、人のことをバカにして、つまらないことばかり訊く!」と、大声で言うのでした。それは大量のご飯粒を、何度も何度も、口から吐き出しながら・・・。