詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

わろてんか(第42回)、あのNHKが、あのテレビ東京(釣りバカ日誌)の、力を借りることになるとは!


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 NHK・朝の連続テレビ小説「わろてんか(第42回)」は、この回の放送の約半分が、喜楽亭文鳥の落語「時うどん」、そのあとは、楽屋で、藤吉とてんへの文鳥の忠告、事務・応接室で、新聞記者の取材、てんと楓の再会、翌日の新聞を皆の前で、キースが読み上げ、万歳、伊能との語らい、寺ギンとの商談、亀井を下足番にする話、そして、これまでとは、明らかに、雰囲気の違う、来週の予告となる訳ですが・・・まず、エピソードのひとつひとつに、いちいち、突っ込まずにはいられない点があることは、これまでと同じ、特に、長い尺を使った、文鳥の落語の後に、ゴチャゴチャと、あれもこれも、詰め込み過ぎなのは、この文章を読んでもらえば、誰でも、分かることでしょう。

 

 ただし、今回の放送の、二大論点となっているところは、「文鳥の落語」と、「釣りバカ日誌のパロディ予告」を、どう評価するべきかなので、他のエピソードに関する感想は、敢えて、スルーすることにします。

 

 

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 今回の、文鳥の落語・・・ストーリーとは、直に関係する訳でもないのに、長めの時間を使って、見せ場にするという手法は、前作の「ひよっこ」が得意とする(多用した)ところで、特に、斬新なものではありません。

 

 よく、つまらない政治ドラマが(今のフジの月9もそうですが)、高校生の作文の延長みたいな、幼稚な演説を、主人公に長々と語らせてしまう、アレと、基本的には、一緒でしょう。

 

 そうなると、問題は、演じた者の質と、演出の質と、脚本の質と、総合的な質は、どうだったか、ということになると思います。

 

  まず、文鳥を演じた笹野高史の落語ですが、2~3分だったら、申し分ないもの(演技で充分、ごまかせるもの)だったと思いますが、7~8分もやるとなると、ちょっと・・・一見、巧く見えても、本物の落語家が見れば、「こんなもので、巧いと思うなよ」と、たしなめられる程度の質のような(ドラマ的演技の良し悪しと、落語の上手下手は、本質的に違う)気がします(当然と言えば、当然ですが)。

 

 ネットなどで、多くの人が指摘しているように、ここまで、長いものをやるのなら、文鳥役は、役者ではなく、本物の落語家を起用するべきだったかと、私も思います。

 

 

 次に、演出ですが、名人が落語をしていることの、表現方法が「常に、爆笑を取っている」というのは、陳腐の一語・・・もっと、静けさあり、微笑あり、爆笑あり、子供だから、余計に笑っていたり、子供だから、意味が分からず、キョトンとしていたり、そういう、当たり前の配慮の出来ない、駄目な演出家であることが、今回も、ハッキリしただけ・・・つまり、及第以下でした。

 

 

 最後に、脚本ですが、落語のネタに、決定版というものがなく、常に、脚色されながら、時代と共に、進化していることを考えれば、もっと「分かりやすさ」をテーマにした、大胆なアレンジがあっても、良かったかと・・・特に、腹を空かした二人組の、兄貴分と弟分の(何でもマネしたがる)関係性を、序盤に描いていないので、弟分の方が、一人で「引っ張りぃな!」をやることの面白さが、視聴者に、伝わりにくかったことは、否めなかったかと・・・ただ、落語の始まりのナレーションと、弟分が、兄貴分のマネをして、うどんを一文安く食べようと挑戦する時の、テロップという手法は、「視聴者への分かりやすさ」を第一に考えれば、別に、批判されるようなことではなく、私は、親切で、良かったと思います。

 

 

 

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 テレビ東京の「釣りバカ日誌」の、はまちゃん役(濱田岳)と、みちこさん役(広瀬アリス)を、ほぼ、このドラマのキャラのまま、風太には釣竿、リリコには「ばかけ!」でビンタと、「民放の他番組を、匂わしただけではない、言い訳しない、大胆なパロディ」は・・・それ自体、面白いものでしたが、NHKにしては、随分と掟破りな・・・この「釣りバカ日誌風予告」の、出来上がる経緯が、この二人がキャスティングされた時点で、決まっていたものなら、いやらしいだけですが、そうではなく・・・今の、わろてんかが、視聴率以外、スタッフ・キャストの求心力となるものがなく、「前作・ひよっこのような、コアなファンがいない」という、寂しい現状に、危機感を覚えた、プロデューサーなり、ディレクターなり、脚本家なり、出演者なりが、急遽、アイディアを出し、即座に、採用されたというなら、そのフットワークの軽さは、好意的に、評価されるべきだと思います。

 

 実際、このNHKの朝ドラらしからぬ、想定外の、奇襲攻撃は、ネット上の世論の中にも、風穴を開けたようですし、出演者・スタッフの間の風通しも、これで随分、改善されたかも知れません、「これだけ、自由なことが出来るんだ!」と・・・筆者は、全くもって、わろてんかのファンではありませんが、だからといって、別に、叩くことを前提にして、記事を書く度、批判をしている訳ではなく、このドラマの脚本家の吉田智子氏が、「さあ、叩きなさい!」と、毎朝、サービスしてくれるから、叩いているだけなので・・・私だって、出来ることなら、全150回超の放送のうち、1回や2回は(それ以上は、期待しません)、このドラマを絶賛してみたいものだと、思ってもいます。

 

 今回の「釣りバカ事件」が、良い切っ掛けとなって、今後、私のささやかな願いが叶えられるようであれば、嬉しい限りなのですが・・・。