詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

わろてんか(第59回~第60回)、団吾の契約金2万円の話、きっと、視聴者・大失笑のオチが待っている?


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 NHK・朝の連続テレビ小説「わろてんか(第59回~第60回)」は、てんに助けられ、風鳥亭で働くようになった、お夕は、先代団吾の娘で、その夫・団真は、二代目団吾の兄弟子だった・・・お夕と団真は、十年前、駆け落ちし、月の井一門を、破門になってはいるものの、団真は、落語への未練を捨て切れず、お夕もまた、彼が咄家として、復活することを望んでいた・・・そんな二人の願いを叶えてあげたいと思う、てんと、二代目団吾を、北村笑店専属にすることで、頭がいっぱいの藤吉は、関係がギクシャク・・・かつては、本物の兄弟のようだったという、団吾と団真の関係も、今は最悪で、団吾が「あんな男(団真)の上がる小屋には出ない」と、藤吉に言ったことから、てんと藤吉の立場の違いは、ますます、鮮明になる・・・そんな中、風鳥亭の高座に上がる予定だった咄家が、急遽、来れなくなり、てんは、団真に、その代役を頼む・・・最初は客にウケていた、団真の落語だったが、客の一人が、「この前、偽団吾を騙って、食い逃げしようとしたヤツや!」と気付いたことから、小屋の雰囲気がおかしくなり、団真も動揺していく、そして、お客から、舞台へと、モノが飛び交う中、団真は、落語の途中で、高座を降りざるえなくなる・・・楽屋で、落ち込む団真を励まそうとする、お夕だったが、かえって、彼の自尊心を傷付け、彼女は、夫婦になって初めて、頬を叩かれてしまう・・・この騒動を聞いた藤吉は、自分の言い付けを無視し、勝手なことをした、てんを、厳しく叱りつける・・・ちなみに、キースたちのストライキは継続中、あの人気者、二代目団吾さえ、日々、稽古に励んでいるにも関わらず、未だに、新しい芸を考えることも、これまでの芸を磨こうともしないまま、「団吾に、2万円の契約金を払うらしい」という噂を聞いて、「あの、資本家め(藤吉め)!」と大騒ぎ、自分たちがストライキをするのは、当然との思いが強まる・・・あらすじだけを読むと、それなりに、面白そうな感じもしますが、実際のドラマを観ると、かなり、ニュアンスの違う話に仕上がっているのが、このわろてんかの大きな特徴のひとつで、おそらく、テレビガイド雑誌等で、あらすじを書いてる、編集者たちも、「繋がってない話を、脳内補完して、繋げてやる作業」を億劫がっているに、違いありません。

 

 そんな、キャラ殺し、キャスト殺し・・・更に、あらすじ書き殺しの、ドラマ界のゴルゴ13(殺し屋)とも言うべき、「わろてんか(第59回~第60回)」で、私が気になった点について、いくつか、指摘してみたいと思います。

 

 

「風鳥亭に飛び込んで来た、団吾を見て、うろたえながら、逃げ出してしまう団真、彼を追う、お夕に、団吾が『あんな男、見限った方がええで、お夕!』と、先代のお嬢さんを、呼び捨てにすることの違和感」

 

「団吾から、『2万円の契約金(自身の借金と同じ額)と、月五百円の給与が払えるなら、専属になってもいい』と言われ、何とかしようと考える藤吉と、戸惑うてん・・・明らかに、北村笑店の二軒の寄席の収入では、支払えるはずのない額なのに、一体、どんな秘策がある?ある意味、楽しみだが、どうせ、『あり得ない!』としか言いようのない、オチがつくに決まっている?」

 

「突然の団吾の来訪で、正体がバレてしまった、お夕が、てんに『隠しだてして、スミマセンでした』と頭を下げる・・・父親が咄家で、夫も咄家と聞いて、『どこの何て名前の咄家さん?』と訊かなかった、てんの方が、どうかしている」

 

「団真は、十年前、お夕と駆け落ちした時に、破門になったはずなのに、どうして、月の井団真の名前で、寄席の高座に上がれるのか?どう考えても、おかしい」

 

「元席主の亀井が、団真のことを、先代団吾の一番弟子だということと、その芸風を覚えていて、その後、彼が先代団吾の娘と駆け落ちして、破門になっていることを知らないのは、おかしい(高座に上げようとするのは、おかしい)」

 

「派手な宴会で、一堂が酔い潰れてしまった後、一人、団吾が、団真に触発されて、崇徳院の練習をする姿を、見てしまった藤吉が、『毎日、血を吐くような稽古をしている』と認識・・・たった一回、目撃しただけなのに?たまたま、トイレに起きて、廊下を歩いて来た、席主仲間から『団吾師匠は、どれだけ遊び疲れても、稽古しない時なんてあらへん。酒飲んでる時と、借金取りに追われている時以外は、落語のことしか考えてへんのや。まともに、寝る間もないんちゃうか?』とでも、言われたというなら、話は別だが・・・」

 

「キースたち、ストライキ4人組、『大将が、団吾に2万円払うらしいで!』と聞いて、大騒ぎしているが、『そんな金、あるはずないのに、どないしはるんやろ?』こそ、最初に出てくるべき台詞かと」

 

「キースたちが、『資本家』とか、『書記長』とか、『平等(公平だっけ?)』というワードを使って、無邪気な『労働争議(あるいは、社会主義)ごっこ』をするだけで、きっと、視聴者は、テレビの前で、爆笑しているに違いない、と思っている、このドラマの脚本家の吉田智子氏が・・・一周回って、カワイイ?」

 

「京都から来れなくなった咄家は、寺ギンとは無関係、ということは、今の時点でも、別の太夫元や、フリーの芸人を、何人かは、寄席の番組に入れている?売り上げの6割を、寺ギンに支払っているのに、無駄な出費、そして、今更ながら、寺ギンとの契約内容の、無茶苦茶さ!」

 

「寺ギン(風太)に、代わりの芸人を頼もうとしても、藤吉の団吾獲りが気に入らないから、派遣してくれないって・・・何て中途半端な嫌がらせ、本当に気に入らないなら、今、派遣している芸人も、全て、引き上げればいい」

 

「団真の落語は、ウケていた、だから、偽団吾を騙って、食い逃げしようとしたことが、バレたところで、客全体が、舞台にモノを投げるような状況にはならないかと・・・客同士が、『偽団吾の話なんか聞きたくないわ!』、『うるさい、面白ければ、関係ないんじゃ!』で、二派に分かれて、大喧嘩になって、滅茶苦茶になる(団真が楽屋に逃げていく)方が、良かったかと」

 

「団吾から、『団真は使うな!』と言われているのに、高座に上げて、しかも、お客を巻き込む、大騒動にしてしまった、てんが、藤吉に『お前は、芸のことも、番組のことも分からない癖に、勝手なことをするな!』と怒られる・・・我々、視聴者にとって、藤吉が『笑いの見る目がある、一流の寄席経営者』という印象が、全くないので、団真がお夕に手を上げた時以上の、マイナスイメージ・・・松坂桃李の、ファンであればあるほど、『早く、彼を、殺してあげて(卒業させてあげて)』という願いが強くなっていくという、異常事態に!」

 

 

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 最後に、団真役の北村有起哉の演技が、ネットの評判になっているので、それについて、筆者もひとこと・・・確かに、北村有起哉の演技は、誰が見ても、きちんと、役作りをしてきたことが分かる、見事な熱演でしたが、それだけに、この「わろてんかの世界(悪い言い方をすると、わろてんかのレベル)では、完全に、浮いている存在でしかない・・・逆に、伊能を演じている、高橋一生の方は、わろてんかの世界(あるいは、演出家の求める演技)に、かなり、忠実なため、ドラマに馴染んでいる反面、一部の視聴者からは、下手な演技に見えています・・・どうなんでしょう?北村有起哉のように、自分のイメージ通りに、上手くやって、ドラマから浮いてしまうのは、周囲が悪い、というスタイルと、高橋一生のように、ドラマ(演出家)の求めるものを演じて、自分のことは、多少、抑える(下手に見えてもいい)というスタイルと・・・本当に良いのは、全ての役者が、本気で自分を出して、それを演出家が、巧くまとめて、というドラマに決まっていますが、そのドラマの理想像を、この「わろてんか」に求めるのは、無理難題というものでしか、ない訳ですけど・・・。