詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

第3話「anone(あのね)」、子供を作れない男を、芽キャベツで殴る男の人生の、壮絶なラスト・シーン!


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 日本テレビ「anone(第3話)」は、亜乃音のところから、大金(裏金)を探し出して、持ち帰るはずだった、持本と青羽は、結果として、ただのバイトに過ぎない、ハリカを、車で連れ帰るハメに・・・3人が、もう、手放すことになっている、持本のカレー屋に到着すると、そこには、彼の子供の頃からの友人・西海がいて、本物の拳銃のように改造した、モデルガンを持っていた・・・西海が「(既に、この拳銃を使い)会社で4~5発、撃ってきた、自分のことをバカにしていた上司も撃った」と話をしたので、みんな驚くが、このことは、テレビのニュースでも、報道しており、事実だった・・・西海は、口に粘着テープを貼られた、ハリカを見て、親と交渉し、身代金をもらおうと画策するが、青羽から、「(成功率の低い)昭和の犯罪」と指摘されたうえ、「この人は、悪い人ではなく、頭の悪い人」と、バカにされる・・・しかし、持本・青羽・ハリカの3人は、拳銃を持った西海には逆らえず、「一人でも逃げたら、残りは殺す、連帯責任だ」と、脅されたうえで、青羽が、ハリカの母親と誤解されている、亜乃音のところへ、身代金の交渉に行く・・・手足を粘着テープで縛られている、持本は、ハリカを気遣い、西海に、「水を」と頼んでみるが、「オレに命令するな!」と断られたうえ、「お前に、男として中身がない(子供が作れない)と知って、婚約を解消し、別の男と結婚した女の家庭を壊す権利が、お前にはある」と理不尽なことを言い、拳銃を渡してくるが、当然、持本は、拒絶する・・・その頃、林田印刷所で、亜乃音と青羽が、身代金交渉をしていた・・・最初は、トラブルに巻き込まれたのが、自分の娘だと思い、「あの子が私を頼る訳がない」と、青羽の話自体を疑う、亜乃音だったが、監禁されている娘の写真を見せられ、それが、ハリカだと知ると、死んだ夫の保険金を、身代金として渡す、決意をする・・・持本の店に紛れ込んだフェレットを、西海が見つけ、タグに書いてある住所へ、彼が届けに行くことになり、その隙に、持本とハリカは、粘着テープを外し、自由に動けるようになったが、そこへ、持本が帰って来て、フェレットを届けた、お礼にもらったという、芽キャベツの棒状の茎で、勝手なことをした、持本を殴る・・・一方、夫の保険金だけでは足りない、と青羽に言われ、偽札作りを促され、実際、機械を動かす、亜乃音だったが、結局、前回(ハリカの時)と同じく、偽札を作る技術なんてないことを、青羽に分からせるだけで終わる・・・身代金の受け渡し場所へ行き、車の中で、青羽たちを待つ、西海・持本・ハリカの3人、持本が、「おじさんのことは、いいから」と、ハリカを逃がそうとするが、彼女は逃げなかった・・・この場所を見渡せる、橋の上に、亜乃音と青羽が到着、指示通り、青い封筒に入った身代金(1千万円)を放り投げると、西海が走って、それを拾い、ハリカは解放される・・・ハリカが「(娘ではない、ただのバイトの私のために)何で?」と訊くと、亜乃音は「そうだね、何でだろうね」を繰り返す、そして、抱き合う二人のところに、例の偽札が1枚、風に乗って、飛んで来る・・・車の中で、封筒の中身が、偽札だと気付いた西海は、車を停め、自分のどうしようもない、人生を振り返り、自己嫌悪で、どうにかなりそうになる(自殺をほのめかす)、そんな彼を、持本が、必死になって、慰めようとした時の、「45にもなって」という言葉に、「45だから思うんだ!二十歳の倍思うよ!」と西海は、明らかに、理性を見失う、更に、持本が「オレ、末期ガンなんだ」と、事実を告白すると、「すぐバレる、嘘言うな!」と、西海は持本を拳銃で殴り、偽札の封筒を持って、そのまま、海の方へと走り出した・・・たまたま、何かを調べていた警察官に、呼び止められ、拳銃を見せるように言われた、西海は「弾なんか出ない」と、自分の頭に銃口を向けて、引き金をひくと、彼は、その場に倒れ込んでしまう、警察官は「自殺!」と慌てふためき、車の傍で銃声を聞いた、持本は、西海の死を悟り、うなだれる・・・という、あらすじです。

 

 このあらすじは、主人公のハリカ周辺の話を軸にしたので、元は林田印刷所に勤めていて、今は弁当屋で働いている、中世古と、亜乃音が勤めている法律事務所の、花房の存在に関しては、触れていません。

 

 

 それでは、「anone(第3話)」の感想ですが、幸せそうな人が、全く、出てこないうえに、最後は、自殺者(?)まで出る、暗い話でしたが、第1話・第2話より、展開が派手だったり、ちょっとしたユーモアが、増量されていて(あるいは、観ている側が、このドラマの雰囲気に慣れてきて)、どんどん、面白くなってきている印象です。

 

 

 元は、カレー屋ではなく、国の予算を使うためだけの、無駄な(生産性のない)工事をしていた持本が、子供の作れない身体と判明し、婚約者から、そのことを理由に、フラれてしまい、「オレが、この世に生まれてきた証しとして、何かを残したい」と、工場現場の仕事を辞めて、カレー屋のフランチャイズ店をやるというエピソードは、あまりに、シニカルなユーモアで(持本の小市民性を物語っていて)、筆者には、それが笑えるシーンと理解していても、素直に、笑えませんでした。

 

 更に、持本は、明らかに「多産」を象徴している、棒状の茎に、びっしりと張り付いた、芽キャベツで、西海から殴られるシーンが・・・持本「食べ物、食べ物!」、西海「茹でる前は、ただの植物だ!」という、面白い台詞があったので、笑えるシーンになりましたが、結構、残酷なシーンだったと思います。

 

 残酷さで言えば、会社で発砲事件を起こした、西海が、取り敢えず、欲しかったものは、身代金(大金)ではなく、「終電で帰れる幸せ」だったこと・・・つまり、彼は、本来、この当たり前の労働条件さえ、満たしていれば、発砲事件も、誘拐事件も、起こさないで済んだかも知れなかった、そう考えると、本当に、笑えない話です。

 

 放送終盤の、西海が身代金を手に入れて、それが偽札だと気付いてから、拳銃自殺(本当は、自殺ではなく、アクシデントかも知れない)に至るまでの、彼と持本のやり取りは、脚本だけではなく、演出や役者の演技も含め、かなり、完成度の高いものでしたが、持本の「死んでもいいって言うのは、生まれてきて良かったと、(今後?)思えるってことだよ」から続く、一部の台詞は分かりにくく、蛇足だったかなと・・・西海「警察に捕まりたくない、裁判なんか受けたくない、刑務所なんか行きたくない(だから、死にたい)!」、持本「会社より、マシかもよ!」、西海「仕事もなくなったし・・・家の熱帯魚くらいしか、話相手がいない!」、持本「帰って餌やれよ!」などのくだりは、本当に、面白かっただけに、残念です。

 

 

 最後になりますが、ネット上にある、「(監禁されているハリカも、持本も)逃げるチャンスなんか、いくらでもあったのだから、さっさと逃げたらいい!」という、批判についてですが、これは確かに、ミスなのですが、ドラマを観た人が、「逃げるチャンスがあるように見える」から、ミスなのではなく、「もっと、明瞭に、逃げるチャンスがあったにも関わらず、2人が逃げなかったシーンを、描かなかった」から、ミスなのだと思います。

 

 例えば、身代金を受け取るために、持本の店から、3人で車に乗る時、西海が「忘れ物しちゃった、ちょっと、待っていて」と、ハリカと持本を2人きりにして、残された2人が、逃げる話などせずに、全く、関係ない世間話をしていた方が良かった・・・そうすれば、「この誘拐(監禁)事件は、動機にしても、状況にしても、理屈じゃないんだ、ただただ、運命なんだ!」と、視聴者に認識させることが出来て、「さっさと、逃げりゃいいんだ!」なんて、あさってな批判を受けることも、なかったのですから・・・。