詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

今更ですが、芥川龍之介の「河童」を、お勧め(紹介)する記事です!


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 芥川龍之介「河童 どうかKappaと発音して下さい。」は、河童の住む世界を、非ユートピアの舞台にした、この当時の日本社会に対する風刺、あるいは日本を飛び越え、人類全体に対する風刺といえる。


 作者・芥川が自殺をする、その数ヶ月前に書かれた小説であり、その時の彼の陰鬱な気分と、この世に存在する、あらゆるものへの嫌悪感(中でも、芥川自身に対する嫌悪感)が、創作の動機になったというだけに、その作風は、極めて暗い。



 恋愛・出産・遺伝・家族・道徳・慣習・法律・政党政治・社会主義・失業・テクノロジー、更に、芸術至上主義、ジャーナリズムと検閲、戦争に、自殺に、宗教に幽霊と、河童の口を借りて、芥川のシニカルな、まるで、人間否定論ともいえる、価値観が披露されていく。


 例えば、河童(人間)は、戦争ともなれば、相手国に勝つため、自分が生きるためなら、石炭殻でも食べる、その負の特性を理解している、資本家のゲエルは、戦地に、大量の石炭殻を送り、利益を得た。


 この話よりも、もっと悲惨なのは、文明(テクノロジー)が進歩し、機械による、あらゆる商品の大量生産が可能になると、多くの職工たちは失業し、職工屠殺法により、殺され(国家的に省略され)、他の河童たちの食糧になってしまう。


 もしかしたら、芥川は、戦争という、非日常より、もっと悲惨なのは、日常の出来事として、着々と進みつつある、失業(あらゆる機械化によって、人間が要らなくなること)だと、感じていたのかも知れない。



 河童の住む世界を体験した、物語のかたりべである、精神病の患者・第二十三号は、冒頭で「貴様もバカな、嫉妬深い、猥褻な、図々しい、自惚れきった、残酷な、虫のいい動物なんだろう。出て行け!この悪党めが!」と、人間を(作者・芥川ごと)断じているが・・・物語の中で、最も、芥川自身の「理想と現実」を象徴している登場人物は、自由恋愛家にして、懐疑主義者にして、無神論者にして、芸術至上主義者にして、超河童思想にかぶれる、詩人のトックである。


 詩人のトックは、結婚をせず、家庭を持つ者を皮肉り、芸術は、他者・国家・道徳・慣習など、あらゆる支配(影響)を受けない、「芸術のための芸術」を、何よりの主義としていたが・・・詩人として行き詰まり、ピストルで自殺し、幽霊として、再登場した彼は、死後の名声や、元恋人が誰といるか、自分の子供はどうなったか、などを気にする、俗物でしかなかった・・・。



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 記事タイトルで、お勧めとして置きながら、こんなまとめ方をするのも、おかしい話ですが、この「河童」は、芥川の短編を中心とする、多くの作品群においては、明らかに、失敗作といえる作品かと思われる・・・例えば、河童の世界と人間の世界では、価値観が逆と設定して置きながら、全然、徹底されていないし、河童の世界と、人間の世界を比べるべきなのか、日本の社会と比べるべきなのかを、きちんと考えていないし、あらゆる風刺のネタも、少しかじって、吐き出しただけの、浅はかな(ゆえに、陰気過ぎる)ものが多い・・・しかし、それでも、「芥川の代表作は?」と誰かに訊かれた時、筆者の頭の中を初めによぎるのは、決まって、この「河童」なのである。



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