坂の上の黒
黒い物体が言った
「おれは物凄く硬くなれるし
物凄く柔らかくもなれる」
私は言った
「じゃあ、見せてみろ」
すると黒い物体は、丸くなり
ボーリングの球のようになった
指で触ると、確かに硬かった
「じゃあ、今度は柔らかくなるぞ」
黒い物体は、そう言って、楕円形になり
コーヒーゼリーのようになった
指で触ると、確かに柔らかかった
「で、お前はどういう生き物なのか?」
「知らん、それどころか
自分が硬くなったり
柔らかくなったり出来ると
知ったのは、つい、最近だ」
黒い物体は、それだけ言って
硬くなり、ゴロゴロと、坂道を転がり出した
まだ、訊きたいことがあったのに
もう、既に、姿が見えない