詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

緊急事態!もらったアイスを、とけないように運ぶ話

 

 ついさっき、自宅から、車で三十分くらいの距離があるスーパーへ、買い物に行きました。

 目的の物を買い、自分の車が停めてある駐車場へ向かう途中、背後から声を掛けられました。

 振り返ってみると、そこには、親戚ではないものの、それくらい親交がある、知り合いのオジサンが、両手合わせて、四つも買い物袋を下げ、歩いていました。

 おそらく、二年ぶりくらいの再会でした。ゆえに、オジサンは、こちらの近況を、これでもかと、あれやこれや訊いてきました。私は、素直に質問に答え続けました。

 すると、今度は、オジサンが、自分の近況を話し出しました。勿論、そんなこと、私には、何の興味もありません。ただ、適当に相槌を打ち続けるばかりです。

 数分後、オジサンは話をやめ、持っていた四つのうちの、ひとつの袋を、私に差し出しました。

「いつも、すみません。有り難うございます」

「大した物じゃないから」と言って、立ち去ろうとするオジサンに、私はもう一度、礼を言い、「失礼します」と、車の中に乗り込みました。

 

 袋の中身を確認すると、そこには、いろんな種類のアイスが10個、入っていました。すでに、どれも二割程度、とけているようでした。

 これから、自宅まで三十分の道のりを、このアイスたちは、耐えられるだろうか?幸い、全てカップアイスだから、形状こそ変わらないでしょうが、とけたアイスを、再び固めても、品質低下は避けられません。

 あのオジサン、とけ出したアイスを、こっちに押し付けて、自分は、自宅近所のコンビニで、買い直ししてたりして?なんて、穿った考えもよぎりましたが、私は取り敢えず、真冬だというのに、車内のクーラーを全開にし、スーパーの駐車場を出ました。

 

「アイスがとける。品質落ちる。気持ちは焦る。車内は寒い」と、私は唱えながら、いつもより、アクセルを深めに踏みます。

 しかし、こういう時に限って、信号は赤だわ、ゆっくり自転車で横切ろうとする、ばーさんと遭遇するわ、いつの間にか、すぐ後ろがパトカーだわ、おまけに、近道だと思って選んだ道が、電柱か何かを工事していて、軽い渋滞!と、踏んだり蹴ったりです。

 更に、追い討ちをかけるように、三十歳くらいの女が運転する軽自動車が、一瞬の隙を突いて、私の車の前に割り込んで来ました。

「アイスを乗せているのに!」

 私は、そう叫びそうになりました。ふと、割り込み女の車の後ろを見ると、「赤ちゃんが乗っています」というステッカーが、貼ってありました。

 

「バカか?こっちだって、助手席にアイス乗ってんだよ!アイスはとける。赤ちゃんは、とけない。むしろ、育つ。それなのに、強引に割り込んで来やがって!」

 

 この前代未聞、とは言えないものの、年に数える程しか、体験出来ないであろうマナー違反事件の十分後、私はずっと、苛立ちながら運転しつつも、何とか無事、自宅に到着しました。

 

 オジサンからもらったアイスは、今、冷凍庫の中で、とけきった身体を固めるために、スヤスヤと眠っています。

 

 私の方は、車内のクーラーが効きすぎたのでしょうか?この記事を書いている間も、ずっと、鼻の下を、透明の液が流れ続けています。

 

 

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