小松菜泥棒と張り込みする刑事、認知症の祖母の脳内世界
最近、私の朝の日課は、認知症の祖母の、幻聴や幻覚が生み出した、架空の世界の物語を聞くことです。
昨日も、このブログで「消えた小松菜(ホウレン草)事件」の話をしましたが、今日は、その続編のような話です。
午前九時頃、お茶を持って、私が祖母の部屋に入ると、「昨夜、この家に泥棒が入った時、お前は何をしていた?」と、いきなり凄いことを訊かれたので、「何の話?夢でも見ていたの?」と、苦笑しつつ答えました。
「小松菜、やっぱり盗まれていたよ」
「被害はそれだけ?で、泥棒とは対面したの?」
「昨夜、私の部屋の雨戸を、泥棒がドンドン、ドンドンと叩いて、中に入れてくれ、助けてくれって・・・」
「それだけじゃ、泥棒かどうか分からないでしょ?」
「警察から、追われているのだから、泥棒だよ」
「なぜ、警察が追っていると分かるの?」
「分かるよ。今も庭にいるし」
「庭に?誰が?」
「警察が。パトカーの中には、刑事もいる」
もちろん、言うまでもなく、庭には誰もいません。
「こっちで呼んでもないのに、何のために?」
「泥棒を捕まえるために・・・」
「張り込みをしてるってこと?」
「うん、何人も」
「小松菜盗まれただけで、何人も!警察も大変だね」
「仕事だから、仕方ない」
「ところで、小松菜泥棒、捕まったらどうなるんだろうね?」
「裁判だね」
「・・・小松菜盗っただけなのに、税金の無駄使いって感じがするけど」
「泥棒は泥棒だから、やっぱり、仕方ない」
その後、祖母は縁側に出て、庭を眺めながら、「今は刑事が一人しかいない・・・大丈夫だろうか?お茶を出す時は、楽でいいけど」と言い、自分の部屋に戻り、ベッドの上で、そのまま眠ってしまいました。
それにしても、祖母の人生にとって、小松菜って、何なんでしょうね?
孫の私にも、全く、分かりません。