詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

今更ですが、フランツ・カフカ「変身」を、お勧めする(感想を語る)記事です!


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 ある朝、不安な夢から目覚めた、グレゴール・ザムザは、一匹の巨大な虫と化していた・・・グレゴールは、セールスマンであり、両親と妹を養う、家計の柱であったが、この予期せぬ「変身」によって、ただの厄介者である以上の、不気味な厄介者へと成り下がる・・・グレゴールが、虫としての生活に慣れ、その身体の構造や、動き方を理解し、壁や天井を這い回れるようになっても、家族の方は、醜い虫としての彼の姿(あるいは、今、起きている現実)を、直視することは出来なかった、それは、彼の世話係をしている、妹も同じだった(彼女が部屋にいる時、グレゴールは、いつも、麻布をかけた長椅子の下にいた)・・・ある日、グレゴールの部屋で、母親と妹が、彼の使っていた、家具などを運び出そうとした時、壁に飾ってあった、お気に入りの絵を守るように、張り付いていた彼を、母親が目撃し、そのまま、倒れ込んでしまう・・・その話を聞き、激怒した父親は、グレゴールに、何個ものリンゴを投げ、そのひとつが、彼の背中に直撃し、まるで、釘でも打ちつけられたかのように、その場で、気絶する・・・グレゴールの立場と、彼という働き手を失った、ザムザ家の経済は、次第に悪化していき、父親・母親・妹と、それぞれが働き出していた(そのうえ、部屋の間貸しまで始めた)・・・ある夜、妹のヴァイオリン演奏を切っ掛けに、下宿人たちと、グレゴールが遭遇、驚いた彼らは、即座に、部屋の解約を申し出る・・・この一件があってからというもの、兄思いだったはずの妹まで、彼を見限り、「どうして、コレが、グレゴールだと言うの?」、「放り出しちゃえばいいのよ!」などと言い始め、まともに世話をすることも、なくなっていった・・・埃に覆われた、グレゴールの背中に、めり込んだままの、腐ったリンゴの周囲が、炎症を起こしており、彼は、身動きが取れなくなっていた、しかし、案外、気分の方は良かった、彼は、家族との思い出を振り返ったうえで、「自分は、消えてなくならければ」という思いを強めていく・・・翌朝、グレゴールは死んでいた、その証拠に、老家政婦がやって来て、何度、箒で彼を突ついても、ピクリともしなかった・・・グレゴールの死骸は、老家政婦に、勝手に片付けられ、残された家族は、久し振りに、電車に乗って、郊外へと向かった・・・その時、今後の生活について、3人で語り合ったところ、その見通しは明るく、グレゴールの両親は、年頃で、やっと、元気を取り戻した、我が娘に、良い婿でも見つけてやろう、と考えていた・・・。



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 いろいろと謎(疑問)が多い、カフカの「変身」の中でも、「主人公のグレゴール・ザムザは、どうして、虫になってしまったのか?」、「結局、この虫は、何という虫なのか?」という謎(疑問)は、読後、最も気になるところ(大きな論点)でありながら、もし、作中に、その答えが、きちんと記されていたら、きっと、この作品の価値は、半減していたことでしょう。


 逆に、実行するかどうかは別にして、「脱走や自殺を計画する、グレゴール」、「グレゴールの追放や駆除を計画する、ザムザ家」みたいな話は、あった方が、カフカっぽかった感じがします。



 この作品は、主人公が、いきなり、巨大な虫になってしまうという、奇抜な設定がなければ、「これまで、一家の経済を支えていた息子が、何故か、急に部屋へ引きこもってしまった、さて、これまで、彼に依存していた、家族はどうなる?」という、現代にも、ありそうな話に過ぎません。


 そして、ザムザ家は、グレゴールが虫になったことにより、父親も、母親も、妹も、働くようになり、グレゴールが死んだことにより、一家の漠然とした不安感は、取り除かれ、明るい展望が描けるようになる訳ですが・・・筆者には、虫になったグレゴールが、「ザムザ家の、不幸の元凶」と言えるほど、大きな負担だったとは思えず、悪い言い方かも知れませんが、家の中で、ペットを1匹、飼っているだけの話・・・それだけに、今後のザムザ家の将来が、グレゴールの死だけで、明るくなるというのは、全くもって、幻想のような気がします。



 最後になりますが、「主人公が、一夜にして、虫になる設定は、一体、どこから生まれたのか?」、それについて、筆者が、勝手な推察をしますが・・・主人公のグレゴールと同等に、保険の仕事が忙しかった、作者のカフカが、「明日、勤め先を休むには、どうしたらいい?どうなったらいい?」と、どうせ、休めないと分かっていながら、空想した時の、答えのひとつに、「私が、虫になったらいい!」というものがあった・・・ただ、それだけではないでしょうか?



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