詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

半分人間、もう半分は?

長椅子人間には 背中に、板が付いている 更に、その板には、座布団も二枚付いている 常に、四つん這いで移動している 街で行列を見掛けると 「三十分、二百円ですけど」 と、営業活動を始める 客の大半は、カップル客である 長椅子人間は 結構、おしゃべりな…

原始的手法を侮ることなかれ

明るくて眠れないので 電灯を消そうと ヒモを引っ張ったら 夜が、朝になっていた もう一度、ヒモを引っ張ったら 朝が昼になっていた 朝だろうと、昼だろうと 陽光が眩しくて、眠れやしない 取り敢えず、もう一度 ヒモを引っ張ったら 夜に戻ったので、安心し…

銃乱射事件、原因と結果責任

星空、手に拳銃 私は、弾があるだけ 星たちを、撃ち続けた 私は、星を 的にしていたつもりなのに 血を流し、死んでいるのは みんな、知り合いばかり 何てこった! 星に、唆されてしまったのか? 罠に嵌まっただけとはいえ 私の法的責任は、免れまい 傍聴席の…

オー・ヘンリー風

あるところに、若いカップルがいました この男女は、誕生日が一緒でした 誕生日が来ると、二人は 毎年、靴をプレゼントし合っていました 今年も、男は彼女のためにハイヒールを 女は彼のために革靴を、買いに出掛けました お互い、プレゼントされた靴を履い…

危険地帯、ひと駅違えば、大違い

駅から出たら そこは戦場だった タクシー乗り場へ行ったら 戦車の行列が出来ていた 一応、乗車して、目的地を告げた 「その場所へ行く橋は 三日前に爆破されたので 途中までしか行けない」 ヘルメットに迷彩服の 運転手が言った 「行けるところまで、お願い…

壁画女の恋愛遍歴

壁がある そこには、女が描かれている 女には、魂が宿っている 比喩ではなく、生きている しかし、所詮は絵であり 壁からは出られない つまり、恋も出来ない 通行人を呼び止めて、話し掛けるだけ 天気の話だとか、景気の話だとか 大体、相手の話を聞くばかり…

警察曰く、この女、妄想が酷い

手錠を掛けられたまま ある一室に監禁されていた男は もう、完全に狂っていた この男を監禁し、手錠を掛けた女も 負けず劣らず、狂っていた 「手錠を外して欲しい」 と、男は涙ながらに訴えた 「手首ごと、切り落としてもいい?」 と、女は微笑しつつ、聞き…

自由のリスク、一体、誰が彼を唆したのか?

列車が勝手に 線路からはみ出して どこかへ、行ってしまった 幸い、深夜の出来事で 乗客は誰も居なかった 逃亡した列車は あの目立つ容姿だけに すぐ発見された 誤って、崖の上から落ち 瀕死の状態だった 馴染みの車掌が 「どうして、こんなことに?」 と、…

立派な豪華客船が海底に沈んだ理由

海上で 無人のボロ舟と 豪華客船が、衝突した ボロ舟は、派手にぶっ壊れた それを見た、豪華客船の人々は 大声で笑っていた しかし、次の瞬間 豪華客船は、真っ二つに折れて そのまま、沈没した 人々は、海に投げ出され 「一体、何が起きたのか?」 と、状況…

生まれ変わったら、先端恐怖症

私は不条理にも ボールと化していた 知らない誰かに 高い場所から落とされて ピョンピョン、ピョンピョン 跳ね回っていた 爽快である ボール冥利に尽きるとは まさに、このことである しかし、それも束の間の幸福で 何か尖ったものが 私の中心に、突き刺さっ…

塔を支える原理

古くて細いが、かなり高い この土地の象徴的な塔がある 中に入れる訳ではなく 外をよじ登れる訳でもなく 何か実用的な意味がある訳でもないが あっちこっちから、観光客は集まった 人けのない、月夜の晩に 一人の酔った青年が、塔に訊いた 「おーい、塔よ お…

門がある、かなり大きい 門番がいる、かなり大きい しかも、左右に1人ずつ 私は、門をくぐりたい とにかく、中が見たくて仕方ない だから、二人の門番をけしかけて 仲違いをさせてみた 予想以上の、激しい殴り合いが 延々と、十分以上続いた やがて、右の門…

あなたの近くにも、地底人は存在する

地底人は、粘土で出来ている ごく、たまにであるが 夜、地中を飛び出して 地上を散策し、見聞を広めようとする 地上人に、地底人と知られたら 色々困るので 一応、帽子だったり コートだったり、サングラスだったり マスクだったり、変装をする しかし、勘の…

氷島の迷信、それはそれは冷たい掟

氷島は、氷で出来た島だけに かなり寒い、四季なんかない 厳しい冬と、厳しくもない冬があるだけ この島では、ある時期が来ると 夜の中央広場に 選ばれし、若い男女が 裸で放り出される 当然、寒いので、二人は抱き合う 数分で凍死する 明日の朝には、完全に…

妖怪、雨降らし

妖怪『雨降らし』は いわゆる、唐傘お化けである 日照りになると 村人たちに呼び出され 田畑の前で、雨乞いをやらされるが その成功率は、半日続けて、二割程度 あまり頼りにならないので 村の子供たちが、制裁役を買って出て 唐傘お化けに、石の雨を降らす …

思い上がっていた、その報い

ミイラ女は、かわいそう 約三千年前は、何もしなくても 全身、潤っていたのに 今は、どれだけ水分を摂っても 各種サプリメントを摂っても 化粧水を振っても 保湿クリームを塗っても、パックをしても エステサロンに通っても 全身、乾いたまま、どうにもなら…

未亡人と機械と博士の弟子たち

博士は死んだ、十年も前に 機械が残った、庭の隅の 十畳のプレハブ小屋の中に この機械は、博士が開発した この機械は、意外に大きい この機械は、歯車が無数にある この機械は、半導体が無数にある この機械は、電気とガソリンで動く この機械は、常に熱を…

西から来たのか、東から来たのか、も忘れた

長い橋の真ん中で 一人の男が立っていた 東にも行きたくない 西にも行きたくない だから、川を眺めていた たまに、空も眺めていた 通りすがりの人々に 水や食料を、恵んでもらっていた 「それにしたって、東にも西にも 行きたくない、いっそ川に飛び込んで 北…

坂の上の黒

黒い物体が言った 「おれは物凄く硬くなれるし 物凄く柔らかくもなれる」 私は言った 「じゃあ、見せてみろ」 すると黒い物体は、丸くなり ボーリングの球のようになった 指で触ると、確かに硬かった 「じゃあ、今度は柔らかくなるぞ」 黒い物体は、そう言っ…

ある資産家の生活

黄金人間は 溶かして金にしたら 大変な価値がある だから、いつも 闇の組織に追われている その闇の組織に、捕まらないように 黄金人間は、いつも変装している 帽子、サングラス、マスク マフラー、コート、手袋 季節が、春でも、夏でも この怪しい格好をや…

氷のトリック、やがて、完全犯罪

これは、ある猛暑の年の 夏の盛りの出来事である 氷女は、ある大富豪の 自宅プールに潜んでいた 自分を弄んだ、大富豪の御曹司に 復讐するため 御曹司が、本命の女と 楽しそうにやって来た 氷女は、水中で静かに待機していた プールの水温は、凍る直前まで冷…

色々と事情のある尻尾人間

気を付けてください 私は犬じゃありません ただ、訳あって 四つん這いになっているだけです たまたま、尻尾が生えているだけです 体毛が濃くて、遠くから見ると 獣っぽいだけです それから、さっきまでずっと ワンワン、ワンワン、鳴いていましたけど 脅され…

泣くに泣けない状況

濡れ女は、濡れている 顔は、何時でも化粧崩れ 髪も、乾いたことがない 当然、服もびしょ濡れで 歩く場所、座る場所 みんな濡れている 本人、かなり 自分の濡れっぷりを 気にしているから バスも乗れない 電車も乗れない 車の免許もないし 運動音痴で、自転…

豆腐男の痛い恋の結末

豆腐男が路上で 通りすがりの女に声をかけた 嫌がられるかと思ったが、意外や意外 一緒に、喫茶店へ行くこととなった 豆腐男は、この女に 一目惚れをしていた しかし、女は結婚していた 子供までいた 更に、今夜の旦那の酒のつまみは さっき、雑誌を読んで知…

ちょっと、ひと工夫し続ける私

手首拾った 野良犬にあげた 食べるんじゃないかと思って ドキドキしていた でも、玩具にして遊ぶだけで 食べはしなかった 取り上げた 犬が吠えてきた 「馬鹿犬! この手首は お前のような畜生の 玩具ではない!」 そう私が怒鳴ったら 野良犬は、尻尾を巻いて逃…

たった一杯のために

機械の子供A 一日、たった一杯のオイルのために ほぼ二十四時間、労働させられる 延々と、キャベツを切らされる 機械の子供B 一日、たった一杯のオイルのために ほぼ二十四時間、労働させられる 延々と、エビフライを揚げさせられる 機械の子供C 一日、たっ…

人間何事も慣れとはいえ

とろとろと、とろけるように 眠くなってしまって そのまま眠ってしまって 一度起きて、欠伸をして また、とろとろと、とろけるように 眠ってしまって 今度は尿意で起きて トイレから戻って来て とろとろと、とろけるように 眠ってしまって 意識が朦朧とした…