詩と寓話とシュールレアリスム

タイトル通りのテーマです。シュールな詩と寓話を書きます。たまに、ブログの話やテレビの話、日常生活にあったことを書こうとも思います。

秋の1~2行句集 (30篇) その2

何の秋?結局、何もしない秋 渡り鳥、旅費の要らない、憎いやつ 新米は、コンビニ弁当で食べている 秋の虫、声は良いけど、顔面が 雑誌丸め、部屋に侵入して来た、蟋蟀に立ち向かう 月が出たくらいで、よいっよいっだなんて、昔の日本人はお気楽 秋の七草知…

秋の1~2行句集 (30篇) その1

紅葉って、飛び降りしても、叫ばない 紅葉狩り、モチベーションが上がらない 名月を崖の下から眺めている、訳アリで 猫の眼を、月だと思って、見つめ合う 風がススキと、合気道の特訓 台風来た、野良猫たちは、どうしてる? ミノムシ並みに落ち葉をまとった…

夏の1~2行句集 (30篇) その3

風鈴が、タイマーかけたみたいに、同じ時間に鳴り出す サクランボを口の中で苛め抜く 桜桃が、サクランボとは紛らわしい 特技は、桃の皮を、それは綺麗に剥くことです 美人がカタツムリを踏み潰したくなるよな、梅雨の憂鬱 幽霊の出る部屋に、あえて入居する…

夏の1~2行句集 (30篇) その2

虹の滑り台、ただの死刑台 一人がビニール傘を盗めば、窃盗の連鎖が止まらない 蝿と蚊に、同時に好かれて、今夜は眠れない 蜥蜴は、年老いた壁の隙間から生まれる モグラの死骸、散々命乞いしたまま、固まっている感じ 飛んで来たカナブンの奇襲を、額の壁が…

夏の1~2行句集 (30篇) その1 

とんでもない雷の日には、臍くらいやるよと思う 水で溶かして絵を描きたくなるよな、雨蛙 初めて開いた中国製の傘、いきなり壊れている この甕の梅干しは、子に孫に伝えるタイムカプセル お地蔵様にレインコートかけて、凄く期待する 梅雨が終われば、乾燥機…

不死鳥の苦悩は続く

不死鳥は、死にたがっていた 色々と自殺の方法を研究したが 何をやっても、結局、死ねなかった 不死鳥は、死ぬ気で頑張って 自力で天国まで、飛んで行った そして、神様を訪ね 「死にたいんですけど」 と、ざっくばらんに相談すると 神様は、不死鳥を強く抱き…

クニャリやフニャリや二ャニャリたちの物語

クニャリ、後悔先に立たず クニャリは、フニャリを 愛していたよ 毎日、愛をささやいて キスして、抱擁して 花束もあげたよ けれども、フニャリは 浮気をしたよ 軽い気持ちで、した浮気だよ クニャリは怒って フニャリを責めたよ 彼女は黙って、不機嫌な顔 …

名前の由来について

名もなき鳥が 名前を探し求めて 空を飛び回った しかし、空には 名もなき鳥の、名前なんてなかった 仕方がないので 名もなき鳥は 名前を探し求めて 地上を歩き回った しかし、地上にも 名もなき鳥の、名前なんてなかった 仕方がないので 名もなき鳥は 名前を…

さみしい病人の、それはさみしい最期

さみしい病人がいました さみしい病人は、入院していました さみしい病人は、男でした さみしい病人は、年齢不詳でした さみしい病人は、住所不定でした しかし、誰も気にかけませんでした さみしい病人は、不治の病でした しかし、死に至る病という訳ではな…

もがき虫の習性

もがき虫は ただ背中を地面につけて 転がっているだけなのに 何の危険もないのに 想像で、水中にいるつもりになって このままでは、沈んで行くと勘違いし 手足をバタバタさせ、もがき続ける もがき虫は 疲れて眠ってしまった時も 夢の中で、やっぱり、溺れて…

哀しい一族と、その他の一族

哀しい一族 哀しい男が、哀しい女と 出会って、恋して 哀しい、男の赤ん坊が産まれた 哀しい子供は 哀しい父親と 哀しい母親に 哀しい子守唄や 哀しい昔話を聞かされ 哀しい教育方針のもとに 哀しい学校に入り 哀しい学歴を手に入れ 哀しい会社に就職し 哀し…

革命のための音楽会

月の見える丘で 大規模な楽団が 夜空を眺めていた その時、一個の流星が、月を襲った 月は、素早くよけた しかし、彼を吊るしていた ピアノ線が切れた 月は落下する 星たちは拍手する オーケストラの演奏が始まる 指揮者は、髪を振り乱す 月は我を失い、絶叫…

芸術への理解はある人

小さい額縁に 炎が描かれた 油絵が入っていました その炎に、煙草を近付けると ちゃんと火が点きました ある時、この絵の持ち主が 誤って、指で炎を触ってしまい 火傷を負い、怒りに任せ 傍にあった、花瓶の水をかけました ジュッという音と同時に 炎の絵は…

本当に待っているのは?

あなたは、待つ人に過ぎない しかも、待ち人は来ない 手紙も来ないし、電話連絡もない なぜなら、あなたは 電話もないし、郵便受けもない 待ち人は待ち人で 電話局も郵便局も、信用していない あなたは今日も、三階の窓辺で佇む 昨日も一昨年も、そうだった …

お祭り騒ぎ

太鼓猿の背中には 河童の甲羅のように 太鼓が付いている 手の平がなく 腕がバチになっている 太鼓猿は 仲間で集まると 行列を作って 背中の太鼓を叩きながら 街を無目的に、練り歩く 大変、うるさい たまに、誰かが間違って 太鼓ではなく 後頭部を叩いてしま…

ボールは友達ではない

サッカーをしたいのに ボールがない時 子供たちは、野山へ向かい みんなで協力して ボール豚を捕まえて来る ボール豚は ただの豚の頭である 長めの耳や、大きめの鼻を使って 前回りをしながら 移動するだけの、下等動物である 大きさがちょうど サッカーボー…

三種類の虫の話

情けない虫は 生まれながらに、動けない だから、情けある虫に 餌を運んで来てもらう 容赦ない虫は そんな二匹の姿を発見すると 情けない虫も、情けある虫も 力の限り、ぶん殴り、蹴り飛ばし 気絶させてから、まとめて喰う 食後、容赦ない虫は 「情けない虫…

私の辞書

私には 行く場所も 帰る場所も、ない だから、私の辞書には いってきますも ただいまも、ない そして、私には さよならを言う 相手もいない だけど、私の辞書には さよならだけは きちんと、記されている それは、たぶん 自分に、さよならする時に 使用する…

汚れきってはない男

汚れちまった とにかく、汚れちまった どんなに洗っても、落ちないくらい 汚れちまった 汚れちまった ああ、恥ずかしい こんなに汚れちまって うしろめたい話だよ こんなに汚れちまって もう、どうしようもないから 汚れちまって、汚れちまって 頭が変になり…

今は亡き、アイツへの弔辞

着飾らしてやりたかった 毎日、いつ何時でも 裸でいるしかなかった アイツを 着飾らしてやりたかった 自分のプライドを守るために 服を着る者、着る者に 暴言を吐く、時には殴る アイツを 着飾らしてやりたかった 人に隠れて ファッション雑誌を眺めつつ 思…

誤解と逃走

蝿的動物は 姿形こそ、やや大きめの 蝿に見えるが 実際は、蝿ではない 虫ではなく、動物である 大きく分類すると、鳥類である 知能も高く、衛生的で 犬の糞など発見しても 寄りつくどころか 吐き気に襲われながら 逃げ出してしまう ウグイスのような 美しい…

誰も救われない病院

夜しか開業していない 暗い街の、暗い病院の、暗い診察室で 暗い医師と、暗い看護師と、暗い患者Aが 「いっそ、三人で死にましょうか?」 と、暗い相談をしている その頃、暗い待合室の 黒い長椅子に座っている 暗い患者Bに、暗い受付の女が 「私、この仕事辞め…

将来的には有り得る話

目の前の木に、セミが止まっている 鳴いている、かなり、うるさい しばらくして、泣きやむ、電池切れだ あんなに大音量で、鳴き続けるからだ 仕方ないから、電池を入れ替えてやった 復活した、また懲りもせず、鳴き出した 加減を知らない、大音量で 私、こん…

占有権を主張する私

誰がドアを開けるだろう 私は「帰れ!」と言うだろう 鍵を掛けていないのは 私のミスではあるけれど 不法侵入してもいい そんな理屈は通らない 尤も、ここは私の家じゃない さっき忍び込んで、居座って まだ、間もないという状況だ 誰かがドアを開けるだろう …

このアボカド、どうする?

アボカド これは、爆弾として 三流である 少なくとも レモンほどの 爆発力はない 古いビルを 破壊するのに レモンなら、一個で済むが アボカドだと 五個以上、必要になる ライムでさえ 三個で十分なのに アボカド 繰り返しになるが これは、爆弾として 三流…

犬男~前世の記憶~

前世が犬の男がいた どういう訳か、その時の記憶が 体にしみついていて 誰かに「お手」と言われると 手を差し出してしまうし 誰かに「お預け」と言われると 目の前に、大好物があっても 体がピクリとも動かないし 誰かに「楽な姿勢になって」と言われると 四つん這…

憂鬱と拳銃、獣と遭遇した話

私は、ある時 二匹の獣を見た それは人の姿にも見えた しかし、それは、目を凝らせば 確実に、獣だった 一匹の獣は、疲れて眠っていた もう、一匹の獣は、こっちを見ていた 怒りとも、哀しみともつかない 何とも言えない、表情をしていた 私は、いつも、拳銃…

あの人の関係者同士の対話

あの人は、死んだそうですね ええ、あの人は自殺しました その死に方は、悲惨でしたか? ええ、あの人らしい、悲惨な最期でした あの人は、遺書を残したのでしょうか? ええ、あの人らしい、惨めな内容のものを それを私に見せてもらえませんか? それは、あ…

私と君と、オルガンと

私はオルガンを弾きましょう 君はピアノを弾くのです ピアノがないなんて言わないで 運んで来ればいいのです 私の弾いてるオルガンも どこかの誰かのオルガンです 私はオルガンを弾きましょう 君はピアノを弾くのです ピアノはどこなんて言わないで 音楽室に…

君は病人、私は優しい見舞い客

花束をあげるよ 君は病気だから 花束をあげるよ 僕は君が嫌いだから 花束で叩くよ 花束が全て散るまで 必死になって、叩くよ 血が出ても知らないよ ま、医者に診てもらうといいよ とにかく僕は、君を叩くよ 花束で叩くよ 君が嫌いだという、意思表示だよ 君…